top of page
脳腫瘍総論

脳腫瘍総論

 脳腫瘍とは頭蓋内に発生する腫瘍の総称で、現在約160種類に細分されています。良性と悪性腫瘍があり、周囲組織へ浸潤・転移する腫瘍を悪性腫瘍と呼びます。良性腫瘍は転移を来さない腫瘍を指し、髄膜腫、聴神経腫瘍、下垂体腺腫などが挙げられます。一方で脳の悪性腫瘍には神経膠腫(グリオーマ)、悪性リンパ腫、胚細胞腫などがあります(図1:脳腫瘍全国集計)。当院では、埼玉県東部地区のみならず近隣地区より患者様の紹介を頂き、脳腫瘍治療を積極的に行っております(表1, 図2:当院での治療実績)。正確な病理組織及び遺伝子診断を基に、病状、社会的背景などを考慮し、それぞれの患者さんにとって最善の治療を検討します。その後、患者さん・ご家族との話し合いによって治療法を決定していきます。

 当院では比較的頻度の高い、神経膠腫・髄膜腫・下垂体腺腫・神経鞘腫はもちろん、以下のような特殊な腫瘍に関しても近隣の医療機関からご紹介頂き手術を含めた集学治療を行っております。

・脳幹部腫瘍(神経膠腫・血管芽腫など)

・脊髄腫瘍(神経膠腫・髄膜腫・神経鞘腫など)

・脳室内腫瘍(中枢性神経細胞腫、上衣腫、髄膜腫など)

・眼窩内腫瘍(海綿状血管腫、神経鞘腫、悪性リンパ腫、偽性腫瘍など)

・骨腫瘍(転移性腫瘍、髄膜腫、骨腫、軟骨腫、類上皮腫など)

・小児腫瘍(髄芽腫、上衣腫、血管芽腫、神経膠腫など)

 

腫瘍図1.jpg
図2.png
腫瘍図2.jpg

グリオーマ

 神経細胞を支えている星細胞(グリア)が腫瘍化したもので、10万人あたり3.5人程度発症する代表的脳腫瘍です。グリオーマは組織形態、遺伝子変異によって更に細分化されており、悪性度は比較的良性のグレードIから、最も悪性度の高いグレードIVまで4段階に分類されます。神経膠芽腫(グリオブラストーマ、 グレードIV)は代表的な悪性グリオーマです。グリオブラストーマは数日~数週間の経過で増大し症状が進行するため、早急に検査・治療を進める必要があります。治療は一般的に手術摘出、放射線療法、化学療法の組み合わせで行われます。悪性度の高いグレードIII, IVのグリオーマでは周囲脳組織へ浸潤性に増殖することが多く、手術後の画像検査で全摘出できていても実際には周囲に腫瘍細胞が残存しています。このため術後は放射線・化学療法が必要になります。

[治療法]

・手術摘出

・放射線治療

・化学療法

・オプチューン

​ *グリオーマは20数種類の亜型に分類され、亜型によって上記治療法を組み合わせて治療を行います

​手 術

当院では可及的最大限の腫瘍摘出を行うために、術中ナビゲーションシステム(図3A)術中CT術中蛍光診断(図3B)をしています。一方で脳機能の温存および改善を重視し、術前では拡散テンソルトラクトグラフィー機能MRIによる運動神経線維及び言語中枢の同定、術中では体性感覚誘発電位、運動誘発電位のモニタリングを行っています。また腫瘍切除に際して全身麻酔から局所麻酔に移行し、患者さんに覚醒した状態で機能温存を確認しながら腫瘍摘出する、覚醒下手術を積極的に行っております。正確な組織診断は手術方針の決定に重要であり、術中迅速病理診断に免疫染色法を導入し術中診断の確実性を高めています。

腫瘍図3.jpg

​放射線治療

悪性のグリオーマに対しては、術後放射線治療を行います。低悪性度のグレードIIグリオーマでは、遺伝子診断や患者さんの状態に合わせて放射線照射の時期を決めていきます。

​化学療法

 悪性グリオーマでは、手術時に局所投与型化学療法剤(カルムスチン)を脳内に留置してきます。摘出部周囲の残存腫瘍に対して効果を発揮します。術後は放射線治療に並行して、テモゾロマイド、ニドラン(ACNU)、ベバシズマブなどの薬剤を患者さんの状況によって選択し化学療法を行います。化学療法の副作用を出来るだけ少なくし治療できるようプロトコールを作成しているので、安心して治療を受けられます。低悪性度のグリオーマに対しては、放射線治療同様に患者さんの状態、遺伝子診断に応じて塩酸プロカルバジン、ニドラン、オンコビンの3剤併用療法を検討いたします。

オプチューン® (NovoTTF-100Aシステム)治療(図4)

オプチューンとは、再発及び初発膠芽腫に対して新しく薬事承認された医療機器です。交流電場を腫瘍内に発生させ、腫瘍細胞を死滅させます。電場を作るための粘着シートを頭部に貼り、治療を行います。強い副作用はほとんどなく、再発及び初発神経膠腫に対する治療効果が海外の臨床試験で証明されました。2016年12月に承認され、初発神経膠芽腫に対して使用可能となりました。オプチューンの使用にはノボキュア社の認定講習の修了が必須となっています。治療を希望される患者様は、脳神経外科 永石雅也医師の外来を受診してください。

腫瘍図4.jpg

遺伝子解析

2016年に改訂されたWHO脳腫瘍分類では、脳腫瘍は病理組織学的に160種類以上に細分されており、遺伝子変異の有無が診断に必須となっています。近年グリオーマの遺伝子解析は飛躍的に進み、遺伝子変異に基づいた予後や治療効果のデータが次々と報告されています。当院では摘出した脳腫瘍組織を用いて遺伝子解析を行い、各々の患者さんに合った治療法を選択しています。遺伝子解析は現在保険適応されていませんが、患者さんの費用負担はありません。

当院で施行しているグリオーマに対する遺伝子(染色体異常)解析
MGMT, IDH(図5A), TERT, p53, BRAF, 1p19q LOH(図5B), ATRXなど

腫瘍図5.jpg
グリオーマ

悪性リンパ腫

 血液成分の一つであるリンパ球が腫瘍化したものです。通常はリンパ系組織に腫瘍を形成しますが、頭の中に限局して腫瘍を形成するものがあり脳神経外科で治療を行います。年間発症は10万人あたり0.3人と稀な疾患ですが、近年増加傾向にあります。悪性リンパ腫は放射線・化学療法の有用性が示されており、一般的に一部の組織を手術にて採取(生検)し、確定診断した後に放射線・化学療法を行います。

[治療法]

​・手術にて組織診断をした後、化学療法+放射線治療

1. 手術
術中ナビゲーションシステムを使用し、脳に対する侵襲を出来るだけ少なくし組織の採取を行います。当院では術中に免疫染色法を用いた病理診断を行うため、確実に腫瘍が採取されている事を確認できます。これによって患者さんの負担を最小限にした手術で、確実な診断を実現しています。

2. 放射線・化学療法
基本的にはメソトレキセートを中心とした化学療法を施行したのち、放射線治療を行います。患者さんの年齢・症状・背景に応じて、十分相談した後に治療を行っていきます。

悪性リンパ腫
胚細胞腫瘍

胚細胞腫瘍

 胎児期に存在する、様々な臓器に分化する能力を有する未熟な胚細胞から発生した腫瘍を胚細胞腫瘍と呼びます。分化の特徴によって、胚腫、未熟奇形腫、成熟奇形腫、悪性転化を伴う奇形腫、絨毛癌、卵黄嚢腫、胎児性癌、それらの混合型に分類されます。10-20代の若年者に多く発症し、頭蓋内胚細胞腫瘍の大部分は下垂体か松果体に発生します。

診断
他の脳腫瘍同様、CT・MRIなどの検査が診断に有用です。また血液・脳脊髄液中の腫瘍マーカー(AFP, β-hCG)の上昇が特徴的です。胎児性癌や卵黄嚢腫などのAFP, β-hCG高値を示す腫瘍では、手術による組織診断を行わずに血液・画像所見で診断確定し治療に入ります。

[治療法]

・手術摘出

・化学療法+放射線治療


 胚細胞腫瘍には手術摘出が必要な腫瘍と、放射線化学療法で治療を行う腫瘍があります。日本では悪性度によって、胚細胞腫瘍を3群(予後良好群、中間群、予後不良群)に分類しています。胚細胞腫瘍が疑われた場合、当院では開頭手術あるいは内視鏡を用いた低侵襲手術にて組織を採取し診断確定します。手術摘出が第一選択となる腫瘍では、術中に診断し腫瘍全摘出術に術式を変更します。放射線・化学療法が有効な腫瘍では、組織型によって治療方法が決まります。予後良好群には、カルボプラチン・エトポシド、予後不良群ではイフォスファミド・シスプラチン(カルボプラチン)・エトポシドにて化学療法を行い、終了後放射線を照射します。特に小児期に発生した場合は、小児科腫瘍専門医、放射線科医、病理医などと綿密なカンファレンスを行い、チームで治療にあたって行きます。

転移性脳腫瘍

​転移性脳腫瘍

他臓器の腫瘍が脳に転移した腫瘍を形成したものです。全がん患者さんの20-50%に脳転移を合併すると言われており、近年治療法の向上と共に頻度は増加しています。日本臨床脳腫瘍研究グループをはじめとした各臨床研究グループからの研究で、近年ガンマナイフの有用性が確立されております。当院では患者さんの転移・身体状態に合わせ、手術治療・ガンマナイフ・放射線照射を組み合わせて治療を行っています。

髄膜種

髄膜種

脳表を取り巻く髄膜から発生した腫瘍を髄膜腫と呼びます。女性に多く発生し、大部分が良性腫瘍です。発生部位によって、その初発症状は様々です。症状を有している場合、増大傾向にある場合は治療適応となります。
 
[治療法]
手術摘出
・ガンマナイフ治療(残存腫瘍に対して)
 
 基本的には全摘出で治癒します。腫瘍部位によっては全摘出が困難で、神経機能の温存を考え部分摘出術を行うことがあります。腫瘍発生部位により手術難易度が違います。主に頭蓋底部に発生する腫瘍は、周辺重要組織に隣接していることが多く、手術摘出の難易度が高くなります。当院では主に摘出難度の高い腫瘍を有する患者様を近隣施設よりご紹介頂き、ナビゲーションシステム・術中機能モニタリング・術中CTを用いて、機能温存を第一とした最大限の摘出治療を行っております。残存腫瘍病変に対しては、残存量、腫瘍増殖能などを含めて検討し、経過観察あるいは術後ガンマナイフ治療を行います。 術前に血管を閉塞させ(塞栓術)、出血量を少なくしてから開頭術を行うこともあります。術前に塞栓術を行うとほとんど出血せずに安全に手術を行うことが出来ます。

髄膜種1.jpg
髄膜種2.jpg

​手術前

髄膜種3.jpg
髄膜種4.jpg

​手術後

視力の障害で見つかった右蝶形骨縁髄膜腫、摘出術を行っています。

術後も再発なく、外来通院をされています。

下垂体腺腫

下垂体は8種類のホルモンを産生する中枢器官です。下垂体細胞が腫瘍化したものを下垂体腺腫と呼び、その大部分が良性腫瘍です。腫瘍が増大すると、隣接する視神経(視交叉)が圧迫され両眼外側の視野が見づらくなったり(両耳側半盲)、視力が落ちます(視力低下)。一方で、腫瘍によってホルモンの産生が下がったり、特定のホルモンを過剰に産生し、そのホルモン特有の症状を引き起こすことがあります。症状を有する場合に治療の適応となります。

[治療法]

・手術摘出

・薬物治療(ホルモン産生腫瘍)

・放射線治療

手 術

 一部の特定のホルモンを過剰に産生するホルモン産生腫瘍に対しては薬物療法があります(後述)。 薬物療法が効かない場合、もしくはそれ以外は外科的治療が基本となります。


①     内視鏡下経鼻的腫瘍摘出術

細い神経内視鏡を 鼻から入れて腫瘍を適出する方法です(図2)。当院ではナビゲーションによる周囲組織の同定、4K対応の最新内視鏡で手術を行います。かつては顕微鏡にて行っていましたが、内視鏡機器の向上、またその操作性から内視鏡手術が主流となっています(図3)また術中CTにて残存腫瘍を確認し、最大限の摘出を行います。

(図2)

下垂体2.jpg

(図3)

下垂体4.jpg

当科では 耳鼻科と合同で手術をしています。理由は 副鼻腔の操作は耳鼻科の専門であり、術後の創部のメンテナンスも含めてきれいに仕上がるからです。外から見えない部分ですが、とても重要なところです。

 
②    開頭腫瘍摘出術
腫瘍が上側に進展し内視鏡が単独での摘出が困難な場合、開頭術にて腫瘍を摘出したり、開頭と内視鏡を組み合わせて腫瘍摘出することもあります。

​薬物療法

 以下のホルモンを過剰に産生するホルモン産生腫瘍に対してのみ薬物療法の適応があります。

 

① GH(成長ホルモン)産性腫瘍

成長ホルモンは成人するとほとんど分泌されないホルモンです。このホルモンが成人してからも多いと、いろいろな問題が生じます。まず顏貌の変化(唇や舌が厚くなる、下あご や 額部分の突出などの変化や四肢末端が肥大し、指や足が太く変形します。また、ホルモンが多いことで、体を元気にする働き、すなわち血糖値や血圧の上昇などの働きが過剰となり、糖尿病や高血圧のリスクが上昇します。さらには、舌の肥大による睡眠時無呼吸症候群を起こすことがあります。これらの合併症により寿命が短かくなることが知られています。その他、腫瘍が大きい場合には視力視野の障害などを伴う場合もあります。治療の第一選択は経鼻的下垂体腫瘍摘出術が推奨されています。しかし、合併症などで手術の危険性が高かったり、手術だけで完治することが難しい場合には、薬物療法や放射線療法を追加いたします。薬物療法には内服薬(ドパミン作動薬)や注射薬(ソマトスタチンアナログ)などがあります。

  

 ② プロラクチン(PRL)産生腫瘍

ホルモン産生腫瘍中、最も多く、圧倒的に女性に多いです。プロラクチンは乳腺を発達させるホルモン(乳汁産生)で 妊娠すると 赤ちゃんにおっぱいを与えるために大量に産生されます。PRLが過剰に分泌されると体が妊娠した時と同じ反応をし、月経が止まり、乳汁分泌が起きます。男性は射精障害など男女ともに不妊治療の精査にて見つかることがあります。治療の第一選択は薬物療法(ドーパミン作動薬)でほとんどが内服でコントロール可能です。

放射線治療

ガンマナイフ・サイバーナイフという定位放射線治療がありますが、効果は限定的で初回治療として行うことはありません。摘出困難な腫瘍に対して検討されます。

下垂体腺腫

​ラトケのう胞

下垂体に胎生期の遺残であるラトケ嚢という袋のようなものが、なんらかの原因で 大きくなったものです。嚢胞(袋の様なもの)が大きくなることで、視神経(視交叉)を圧迫し視力低下・視野障害(両耳側半盲)、下垂体圧迫による下垂体機能低下に伴う様々なホルモンの症状が生じます。ラトケのう胞の大部分が無症候性ですが、このような症状を来した場合、手術によるのう胞液の穿刺ドレナージ、嚢胞膜の摘出を行います。下垂体腫瘍と同様に、鼻からアプローチして、内視鏡使用下に摘出します。

ラトケのう胞
頭蓋咽頭腫

​頭蓋咽頭腫

   頭蓋咽頭管という胎児期の構造物の遺残から発生する腫瘍で、良性腫瘍に分類されます。しかしながら下垂体および視床下部といった、記憶(乳頭体)や種々のホルモンの機能、時間感覚や睡眠、食欲などの中枢部位に発生するため、腫瘍の増大にともなって重篤な障害を来すようになります。頭蓋咽頭腫が疑われた場合、手術による摘出が必要となります。しかしながら、視床下部そのものに浸潤していると、機能障害の面から全摘出が難しく再発を繰り返すことが多い治療困難な腫瘍です。機能温存を第一に可能な限り摘出を行い、残存病変に対してガンマナイフ(サイバーナイフ)治療を行います。

 

[治療方法]

・手術摘出(経鼻内視鏡的・開頭腫瘍摘出)

・ガンマナイフ(サイバーナイフ)治療

手術治療

① 経鼻内視鏡下腫瘍摘出術

腫瘍が鞍隔膜の上下に限局している場合、経鼻的な腫瘍の摘出が可能です。下垂体腺腫と同様に、ナビゲーションにて重要組織を確認し、最新4K対応内視鏡にて腫瘍を摘出します。術中CTの併用により、残存腫瘍の確認が可能です。

下垂体5.jpg

② 開頭腫瘍摘出術

腫瘍が上方、外側などに広がっている場合、経鼻内視鏡下摘出は困難であり、開頭術あるいは開頭術と経鼻アプローチの併用で手術を行います。経鼻手術と同様に、ナビゲーションシステム、術中モニタリング、術中CT検査を行いながら可及的全摘出を行います。

 

 ホルモン異常(尿が多量に出てしまう尿崩症など)で発症する患者さんが多く、こういった場合には摘出方法に関わらず、手術後も症状が持続することが多いです。また、腫瘍の浸潤によってはホルモン分泌に関与する下垂体自体を摘出しなかればならない場合があります。こういった場合には、術後下垂体ホルモンの補充が必要となります。

ガンマナイフ(サイバーナイフ)治療

 最初からガンマナイフ治療を行うことはなく、術後の小さな残存腫瘍に対して照射を行います。近年その有効性が示されつつあります。

聴神経腫瘍

聴神経腫瘍

 耳の神経を包む細胞から発生する良性の腫瘍です。大きくなるにつれて、徐々に難聴や耳鳴りが出現します。さらに大きくなると小脳や脳幹を圧迫することでめまいや歩行障害などの症状が出現します。CT検査、MRI検査で診断をつけます。また、聴力検査なども必要であり耳鼻咽喉科にも受診します。


 小型腫瘍でも難聴などの症状を呈し、増大すると脳幹や周囲の重要な神経組織を圧迫するため、サイズ・部位によっては治療が必要となります。全摘出することで完治しますが、腫瘍の周囲には聴神経や顔面神経が近くを走行したり腫瘍に巻き込まれているため、術後に顔面神経麻痺や聴力が悪化することもあり注意が必要です。聴力・顔面神経などのモニタリングを手術中に行い、機能を温存した最大限の摘出を行っています。腫瘍の形状・性質によってガンマナイフやサイバーナイフといった放射線手術を選択することもあります。

 

[治療法]

​・経過観察(自然縮小があります)

・開頭腫瘍摘出手術

・ガンマナイフ(サイバーナイフ)治療

手術摘出

聴神経腫瘍1.jpg

術前

聴神経腫瘍2.jpg

術後

70歳女性。右聴力障害、小脳失調により歩行ができなくなり紹介されました。年齢を考慮して亜全摘出術を施行。顔面神経麻痺も残らず、元気に歩いて退院し、今でも生活を楽しんでいらっしゃいます。

ガンマナイフ(サイバーナイフ)治療

​ 腫瘍が小型の場合、単独治療が有効なケースがあります。単独治療でも十分な効果、機能温存が期待できます。

三叉神経鞘腫

 神経線維を取り囲む神経鞘から発生する腫瘍で、三叉神経と呼ばれるおもに顔面の知覚に関係する神経に生じたものを三叉神経鞘腫と呼びます。聴神経腫瘍と同様に、一般的には良性腫瘍になります。無症状であれば経過観察します。顔面の感覚異常やものが二重に見えるなどの症状がある場合、あるいは腫瘍が増大傾向にある場合などは治療の適応となります。治療には開頭にて腫瘍を摘出する方法と、ガンマナイフによる治療法があります。

 

[治療法]

・開頭腫瘍摘出手術

・ガンマナイフ(サイバーナイフ)治療

手術摘出

一般的には手術で全摘出を行います。 腫瘍の広がり方は多彩で、頭蓋底手術の特別なテクニックを必要とすることもあり 経験ある医師による手術をお勧めします。

三叉神経鞘腫1.jpg
三叉神経鞘腫2.jpg

術前

術後

ガンマナイフ(サイバーナイフ)治療

​腫瘍が小さい場合、単独治療が適応となります。これまでの報告によると、その有効性は聴神経鞘腫と比較しやや低いです。

三叉神経鞘腫
海綿状血管腫

海綿状血管腫

 静脈の良性の血管奇形で多くは無症状であり、MRI検査などで偶然見つかることが多いです。脆弱な血管が破れると脳内出血を起こしたり、てんかん発作の原因となることがあります。多くは小さな出血ですが、まれに大きな出血を起こしたり、出血を繰り返すことがあります。MRI検査で診断がつきます。治療は保存的加療(血圧管理など)が基本です。繰り返し出血する場合やてんかん発作など症状がある場合は手術で摘出することもあります。脳幹部にもできることがありますが、手術のリスクは高いため担当医とよく相談することをおすすめします。重要な神経に接している場合、術前のナビゲーション、術中の神経モニタリングが有効で、神経機能温存を第一に考えた手術摘出を計画します。

[治療法]

 ・保存的治療

​ ・手術摘出(症状がある場合・出血を繰り返す場合など)

海綿状血管腫1.jpg
海綿状血管腫2.jpg

脳幹部の海綿状血管腫の症例

出血があり顔と手足の麻痺、めまい、歩行障害が出現したため摘出術を行っています。

海綿状血管腫3.jpg
海綿状血管腫4.jpg

血管腫・血腫を摘出しています。数か月後には麻痺も改善して独歩で外来に通院しています。

bottom of page